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1.確定申告って何?
そもそも個人の所得には「所得税」がかかります。そこで、所得にかかる税金(所得税及び復興特別所得税)の額を計算し、税務署に対して「1年間で稼いだ金額と、その税金金額」を申告します。これが「確定申告」です。
確定申告を行うことで、納めすぎた税金が戻ってくる場合もあります。
個人の場合、毎年1月1日から12月31日の1年間に得た所得を計算します。確定申告書や決算書などの必要書類をそろえ、例年2月半ばから3月半ばまでに税務署に申告することとなります。
例年、2月中旬から3月中旬までに税務署に申告・納税します。
主に個人事業主の方が、確定申告を行う税目は、「所得税(復興特別所得税含む)」と「消費税」の2つです。所得税は所得に対してかかる税金です。消費税は収入に対してかかる税金で、原則として2年前の売上が1000万円を超える個人事業主に支払い義務があります。
その他、「個人住民税」、「国民健康保険税」、「事業税」がありますが、この3つの税目は所得税を申告すれば、都道府県や市区町村から納付額が通知されてきますので、申告の必要はありません。
2.確定申告が必要になる人
2.1 確定申告義務
原則として以下の所得が1年間の間に発生している方は、確定申告を行って税金を納める義務があります。
・配当所得
・不動産所得
・事業所得(個人事業主)
・給与所得(サラリーマンでも確定申告が必要な場合もあります。詳細は後述。)
・退職所得
・譲渡所得
・山林所得
・一時所得
・雑所得(年金、副業による所得)
事業における「所得」は、「収入金額-経費」です。年間収入が1,000万円でも、経費が300万円だった場合、所得は700万円となります。

2.2 無申告・遅延のペナルティ
確定申告をしないor期限を過ぎた場合は、本来納めるべき税金に加えて、「加算税」や「延滞税」などのペナルティ金額が追加され、納税金額が高くなってしまいます。
面倒なことが多い確定申告ですが、申告準備はなるべく早めに始めると安心ですね。
3.サラリーマンの確定申告について
給与等を1か所のみから受けている場合は、会社が年末調整を行ってくれるため、確定申告は不要です。年末調整という形で、会社が皆さんの確定申告を代わりに行ってくれているのです。
そのため多くのサラリーマンは確定申告を行わないため、余計に馴染みがないですね。
サラリーマンの方にとっては、「必ず確定申告をしなければいけない場合」と、「確定申告をした方がお得になる場合」があります。
3.1 確定申告が必要な方
・年間の給与収入が2,000万円を超える方
・2ヵ所以上の会社から給与を受け取っている方
・給与所得及び退職所得以外の所得が20万円を超える方
・その年の途中で退職し、再就職しておらず、年末調整を受けられない方
年間の給与収入が2,000万円を超える方や、給与所得及び退職所得以外の所得(不動産・株式投資や副業、懸賞の賞金、競馬・競輪の払戻金など)が20万円を超えている方は、確定申告が必須となります。
ただし、宝くじやサッカーくじの払戻金、相続税や贈与税の対象となる損害保険契約の保険金、生命保険契約の給付金等は法律で非課税とされています。
その他、退職などで年末調整をしていない人も確定申告は行った方が良いですね。

3.2 確定申告をした方が良い方
・医療費控除、雑損控除などを受ける方
・住宅ローン控除を初めて受ける方(2年目以降は年末調整で大丈夫です。)
・ふるさと納税でワンストップ特例制度を使用していない方
医療費が1年間を通して10万円(総所得金額等が200万円未満の方は、その5%)超えている場合は、超えた分だけ医療費控除を使うと税金が小さくなります。(生命保険・医療保険等から支給される保険金補填分は除きます。)
2017年から新たに「セルフメディケーション税制」も開始しており、控除の幅も広がっています。
また、住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、住宅ローン控除を受けることができます。サラリーマンの場合、ローンを組んだ最初の年に一度確定申告を行えば、翌年からは年末調整の対象になります。
ふるさと納税でワンストップ特例制度(確定申告が不要となる制度)の適用をしていない方も、ふるさと納税の効果を受けるために確定申告を行いましょう。
年末調整は、毎年11月から12月にかけて行われます。毎月給与から引かれている所得税はあくまで概算金額のため、1年間の所得が確定する12月に所得税の確定額を算出し、これまで概算で支払っていた税金との差額を精算します。
上記条件に該当しない方は、年末調整を行うことで納税の精算が済んでいるため、確定申告を行わなくとも正しい納税額で納税しているのです。
4.個人事業主の確定申告について
4.1 確定申告が不要となる場合
個人事業主の方は基本的に確定申告を行うことになります。確定申告をしなくても良い場合は、所得が赤字であったり、所得は黒字でも所得控除(基礎控除)を差し引くと赤字になる場合です。具体的には、確定申告書B第1表27欄の税額から28欄配当控除を差し引いた金額が0になる場合です。
ただ、申告不要であると思っても、申告が必要となるor申告をした方が良い場合もあるので注意が必要です。
4.2 確定申告が必要となる・確定申告をした方が良い場合
・青色申告特別控除を受ける場合
・赤字の繰越(青色申告)をする場合
・還付金を受領する場合
青色申告を行う利点については次章で詳細に説明しますが、最大の利点は複式簿記の帳簿をつけることで最大65万円の青色申告特別控除を受けることができる点です。
この青色申告特別控除を受けるためには、期限内に確定申告をすることが必要となります。もし65万円控除をした上で確定申告をしなくても良い場合に該当したとしても、特別控除を受けるためには確定申告が必要となります。
また、青色申告には赤字を3年間繰り越して、将来の黒字と相殺できる(その分所得税が小さくなる)制度があります。この制度を黒字の年に使うためには、赤字の年に確定申告をしておく必要があります。
申告を行わなくても良い場合であっても、報酬等で源泉徴収されている金額がある場合、予定納税があった場合は、既に支払っている払い過ぎの税金が確定申告を行うことで還付されます。

個人住民税・個人事業税は、所得税の確定申告した場合はそれに基づき計算されるため、特段申告を行う必要はありません。
しかし、上記の通り所得税の確定申告を行わない場合は、市区町村に対して個人住民税の申告が必要となります。所得税と個人住民税では控除額(扶養控除等)が異なるため、所得税がない場合でも個人住民税はかかることがあります。(個人住民税の申告を行うことで、個人事業税も自動計算されます。)
また、個人住民税を支払う必要がない時であっても、所得を申告しないと以下の不都合が生じてしまいますので、申告は忘れずに行いましょう。
・国民健康保険の計算ができない
・非課税証明書の発行ができない
5.青色申告と白色申告の違い
個人事業主の確定申告は、「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
5.1 青色申告の内容
青色申告は、特別控除等の特典が設けられている確定申告の方法です。
日々の取引を帳簿の形で記帳し申告すると、多くの特典を受けることができます。
<青色申告の主な特典>
・青色申告特別控除(65万円or10万円)
・純損失の繰越
・少額減価償却資産の一括費用処理
・青色事業専従者給与の必要経費算入
青色申告で必要となるのは、「帳簿をつけること」と「青色申告承認申請書を提出すること」です。申請書は最初の1回(青色申告を行う年の3月15日まで。1月16日以後に新規に業務を開始した場合は業務を開始した日から2か月以内)のみで大丈夫です。
複式簿記で帳簿を作る場合は青色申告特別控除が65万円、簡易帳簿(単式簿記)で申告する場合は青色申告特別控除が10万円となります。

5.2 白色申告の内容
白色申告は、青色申告より簡単に確定申告ができる方法です。貸借対照表の提出は不要となり、帳簿作成においても取引毎に全て内容を記載する必要はありません。1日の合計金額を一括記載することですみます。
ただし、白色申告には青色申告で示した上記特典がありませんので、節税メリットはなくなります。
(白色申告でも例外的に損失の繰越ができる場合がありますが、地震等の災害時に発生した損失や、年によって収入が大きく変動する所得に対してのみとなり、非常に限定的となります。)
以前の白色申告ではそもそも帳簿をつける義務がなかったのですが、2014年より帳簿作成と保存が義務化されています。白色申告でも結局は帳簿を作成しなければいけないのであれば、節税効果が高い青色申告に是非挑戦してみましょう。
世の中には利便性の高い会計ソフト・確定申告ソフトが出ていますし、自分で確定申告を行うことに不安がある場合は、プロである税理士さんに依頼してみましょう。
6.おすすめの会計ソフト


クラウド会計ソフトはパソコンへの会計ソフトインストールを行わず、税金制度改正のアップデートが不要です。確定申告に慣れない方は基準改正に伴い毎回アップデートする必要があるソフトではなく、クラウド上で全て完結するクラウド会計ソフトがおすすめです。
銀行やクレジットカード等の取引明細自動取得にも対応していますし、クラウド会計を使って請求書作成・発行や、それに伴う売掛金消込・未回収残高の管理も行うことができます。
6.1 弥生会計オンライン
会計ソフトの中でも最も有名なソフトの1つである弥生会計が提供している個人事業主向けクラウド会計ソフトが「やよいの青色申告 オンライン」となります。
インストール版の会計ソフト業界において最大手企業なので、非常に安心感がありますね。基本機能は一通りそろっていて、申告書等の作成までスムーズに対応することができます。セルフとベーシックの2プランがあり、サポート付きのベーシックプランは電話・メール・チャット・遠隔サポート・仕訳の質問等を行うことができるため、サポート体制を重視したい方は老舗企業である弥生会計オンラインが良いです。
なお、2016年12月に白色申告オンラインは無料で使えるようになっているため、白色申告で良い方は「やよいの白色申告オンライン」が最もおすすめとなります。
6.2 freee(フリー)
クラウド会計ソフトの先駆け的存在で、確定申告初心者におすすめの会計ソフトが「無料から使える会計ソフト「freee(フリー)」」です。
通常の簿記の仕訳形式ではなく、借方・貸方等の単語すらほぼ出てきません。簿記の知識がなくても、直感的に使うことができる操作性の高さが特徴です。銀行口座やクレジットカードの明細を自動取得し、勘定科目を推測し仕訳を提案します。使う度にソフトが学習し経理が自動化していくため、使うほど手間も減らせます。スマホアプリ機能が充実しており、スマホアプリから仕訳を入力して申告まで完結することができます。Macでの電子申告機能や仮想通貨の損益計算機能等も追加搭載されています。
ただ、複式簿記の知識を必要しない特殊な入力方式となっているため、他の会計ソフトなどを使ったことがある方にとっては逆に難しく感じてしまう可能性があります。
6.3 マネーフォワード(MF)クラウド会計
対応金融機関が多く、様々なネットバンキングからも自動取込・仕訳記帳ができる本格派会計ソフトが「(マネーフォワード(MF)クラウド確定申告(青色申告)」です。複数の金融機関との取引や多様なクレジットカードを持っている場合は、入力の手間を大幅に削減できます。
(2018年に「MFクラウド会計」から「マネーフォワードクラウド会計」にサービス名称を変更していますが、基本性能に変更はありません。)
基本的な機能は揃っており、弥生会計等の他社会計ソフトからのインポート機能も充実しています。ある程度簿記の知識がある人を対象にしている印象で、会計ソフトを利用したことがある方、簿記知識がある方にとっては、他のソフトを使用するより効率的でスムーズに使うことができる性能です。上位プランにすることで、電子証明書の連携や、仕訳の入力制限、部門処理なども活用できます。個人的には簿記・税務の知識が豊富な個人事業主にとっては、一番使いやすい会計ソフトだと思っています。
一方、領収書やレシートをカメラで撮影すれば自動的に文字に起こすアプリもあり、電話やチャットによる相談窓口も豊富なので、会計ソフトを使い慣れていない方も使用することができます。

上記会計ソフトについては、以下の記事で詳細に解説しています。
7.確定申告を税理士に頼むには?


7.1 税理士ドットコム
税理士紹介サイトの中で最も大きいと言えるのが、『税理士ドットコム』です。
運営母体が上場企業(マザーズ上場)のため安心感がありますね。税理士ドットコムは報酬が小さい(安くすむ)税理士を探すのに長けています。
土日等の面談も可能で、比較的費用を安く抑えたい事業主の方におすすめです。
7.2 税理士紹介エージェント
顧問相場が明記されているため分かりやすく、質の高い税理士をお探しなら『税理士探しの強い味方 税理士紹介エージェント』です。
登録している税理士は独自の審査に合格した税理士のみのため、質が高い税理士を探すことに長けています。顧問相場が明記されているため非常に分かりやすく、サイト自体の情報量も多いです。税理士報酬を安くすることよりも、適正な報酬を払って良い税理士に見てもらい事業主の方におすすめです。
8.終わりに
確定申告は慣れないことが多く難しいため、2月半ばから始まる確定申告の時期になると頭を悩ませる方も多いです。
しかし、確定申告を行うことを通して帳簿を作成し決算を行うことで、1年間の事業成果を振り返る良い機会になります。もちろん節税効果があったり、税金が還付されたりといった金額的な影響も大きいですが、それ以上に過去の事業活動を見返し、次の年度の事業が更にうまくいくよう考えることができることが、帳簿・財務諸表を作成する何よりのメリットではないでしょうか。

