
減価償却は非常によく出てくる単語です。「減価」は「価値が減る」、「償却」は会計の世界では「価値をなくしてしまう=帳簿価額を減らしていく」ことです。
今回はなぜ減価償却が必要なのかについて考えていきましょう!
1.減価償却が必要な理由
いきなりですが、皆さんが運送会社を始める時、収益をあげるためにはまず運送用のトラックが必要です。トラックは「買う」か「借りる」かの選択ができます。
では、2つはどのように異なるのでしょうか。
①買う場合
トラックを900円で購入します。このトラックは3年間使うことができ、運送業を始めることで毎年400円の収益を産み出します。
もし、買ったトラックを買った期に全て費用処理すると、1年目にトラックを購入したために大幅に損失が発生し、1年目の損益計算書は▲500円の赤字ですね。一方、2年目~3年目は400円の黒字です
トラックを使って1年に400円の収益をあげている事実は1~3年目で変わらないのに、利益が年度毎に変わるのは変な感じがしますね。
②借りる場合
トラックを1年300円でレンタルします。その他は同様の条件であれば、毎年の損益計算書は100円の黒字になります。
「買う場合」も「借りる場合」もトラックを使用して収益をあげている事実は何も変わりないのに、損益計算書が全然異なってしまいます。1年目の財務諸表だけを比較すると借りた場合の方が良く見えて、2~3年目を比較すると買った場合の方が良く見えてしまいます。他にも、トラックを買った場合は1年目が赤字なので税金を支払わなくてよいことになります。事業を始めた初期に税金を支払わないのであれば、その金額を他の投資に回すことができるため、借りた場合と比べて不公平ですよね。
つまり、「トラックという固定資産」を「使用」して「収益を生み出している」ことが同じなら、両者とも同じ財務諸表にならないと不公平なのです。
最初に買った固定資産を一気に費用にせず、3年間を通して徐々に費用にしてあげることで、同じ財務諸表になります。これこそが、減価償却を行う理由なのです。
会計の世界では、同じ期間の費用と収益を対応させるという大原則があります。当期の「成果」である収益と、「収益を獲得するのに貢献した努力」である費用を対応させて期間損益を計算します。
今回の例では、900円のトラックを使って1年間で400円(3年間合計で1,200円)の収益をあげています。この400円は全てトラックを使用することで稼ぐことができていますね。そのためトラックの取得に要した900円という費用は、収益を生み出していた3年間に対応させる必要があります。そのため「減価償却」という費用を使うことで、3年間に費用を分けてあげるのです。
2.減価償却の仕訳
トラックを現金900円で購入
現金という資産が減少し、車両という資産が増加しています。この時点での貸借対照表(車両部分のみ抜粋)はこのようになります。
トラックの減価償却費300円を計上
■左側
減価償却費という「費用」の増加なので、左側に減価償却費を計上します。
■右側
「減価償却累計額」という「資産のマイナス」の科目を右側に計上します。減価償却は「トラックを1年間使うことで、その分トラックの資産価値は減ったよね」との発想で、資産のマイナス科目を右側に置きます。
そのため、300円の減価償却費を計上するとともに、資産が300円分減少させる仕訳となります。これを貸借対照表に表すとこのようになります。右側にきている「減価償却累計額」は資産のマイナスなので、ここでは分かりやすく左側の資産の場所に「資産のマイナス」として表現しています。車両の価値が900円から600円まで減少していますね。
減価償却の仕訳には、実は「間接法」と「直接法」の2種類があります。
間接法:「減価償却累計額」という勘定科目が登場する
直接法:「減価償却累計額」という勘定科目が登場しない
(間接法について)
先程の仕訳は「減価償却累計額」が登場するので、「間接法」です。減価償却累計額という勘定科目を使用して「間接的に資産をマイナス」するので、間接法と言います。
(直接法について)
減価償却累計額という勘定科目を使用せず、資産を直接マイナスするのが直接法です。右側が「減価償却累計額」ではなく「車両」になっていますね。「車両」という資産の減少を直接表現するため、直接法と言います。
直接法では貸借対照表も車両が直接減少した形(900円-300円=600円)で表現されます。先ほどの間接法での貸借対照表は車両が900円あり、減価償却累計額が300円マイナスされることで、車両の資産価値が600円になっていました。一方直接法では、車両自体が600円になっています。
しかし、直接法だともともといくらの資産があって、減価償却をどれくらい計上したかが分からないですね。そのため簿記検定の実際の試験でも、実務でも使われることはめったにありません。そのためまずは間接法で「減価償却累計額」を使用する方法を押さえていただくと良いですよ!
