前回は経過勘定について、前払費用を例にとって確認していきました。
今回は4種類ある経過勘定について、例題と共に見ていくことで簿記3級で出題される見越し・繰延べの理解を深めていきましょう!
経過勘定に関する基礎(経過勘定の考え方、なぜ経過勘定が必要か)については、前回の記事をご参照ください。
1. 繰延べ:先にお金の動きがあるパターン
まずは「繰延べ」の2パターンです。「繰延べ」は、先に既にお金を支払ったり受け取ったりしている点がポイントです。「先に」お金の動きがあるので、損益を翌期に「繰り延べる」必要が出てくるのです。
1.1 費用の前払い
早速設例毎に見ていきましょう。各問題共に「取引が起こった時」「決算整理」「翌年度の再振替仕訳」の3つのタイミングでの仕訳を考えていきます。
×1年9月1日、会社の家賃1年分240円を、小切手を振り出して支払った。(決算期は×1年4/1~×2年3/1とします。)
(解答:家賃を支払った時)
支払家賃240/当座預金240
その後、「とりあえず」支払家賃を1年分左側(借方)に書いておきます。
(解答:決算整理)
前払家賃100/支払家賃100
×1年9月1日に1年分家賃を支払っていますが、当期の損益に含めるべきは×1年9月1日~×2年3月31日までの7か月間ですね。
つまり、5か月間(×2年4月1日~×2年8月31日分)は当期の損益に入れてはいけません。しかし、(家賃を支払った時)に12ヶ月分全て「とりあえず」で「支払家賃」としていました。
そのため、5ヶ月分(240円×5ヶ月/12ヶ月)である100円を消してあげます。この相手勘定が「前払家賃」(前払費用)です。

(解答:再振替仕訳)
支払家賃100/前払家賃100
上記「決算整理」は、あくまで前期末の決算のための仕訳です。そのため決算が終わったら全部消す必要があります。再振替仕訳は前期末の決算整理仕訳と、左右が逆になっていますね。
上記仕訳によって、左側(借方)に支払家賃100が計上されるため、×2年度の5ヶ月分の家賃が費用として計上されることとなります。
前期に計上した「前払家賃」(資産)はここで全額消えることとなります。
1.2 収益の前受
×1年12月1日、地代収入(土地を貸していることによる収入)を1年分600円、小切手で受け取った。(決算期:×1年4/1~×2年3/1)
(解答:地代収入を受け取った時)
現金600/受取地代600
1年分の地代を受け取った事実に変わりはないので、現金600を左側(借方)に記載します。小切手を受け取った時は現金でしたね。
その後、「とりあえず」受取地代(収益)を1年分右側(貸方)に書いておきます。
(解答:決算整理仕訳)
受取地代400/前受地代400
×1年12月1日に1年分地代を受け取っていますが、当期の損益に含めるべきは×1年12月1日~×2年3月31日までの4か月間ですね。
8か月間(×2年4月1日~×2年11月30日分)は当期の損益に入れてはいけません。しかし、(地代収入を受け取った時)に12ヶ月分全て「とりあえず」で「受取地代」としていました。
そのため、8ヶ月分(600円×8ヶ月/12ヶ月)である400円を消してあげます。この相手勘定が「前受地代」(前受収益)です。

(解答:再振替仕訳)
前受地代400/受取地代400
上記「決算整理」は、あくまで前期末の決算のための仕訳です。そのため決算が終わったら前払費用と同様に全部消す必要があります。
上記仕訳によって、右側(貸方)に受取地代400が計上されるため、×2年度の8ヶ月分の地代が収益として計上されることとなります。
前期に計上した「前受地代」(負債)はここで全額消えることとなります。
2. 見越し:後にお金の動きがあるパターン
続いて「見越し」の2パターンです。見越しは「まだ」お金を支払ったり受け取ったりしていない点がポイントです。「未だ」お金の動きはないものの、将来必ずお金の動きがあることから、当期分の損益を計算する必要があるのです。
2.1 費用の未払い
×1年9月1日、現金36,000円を借り入れた。借入期間は1年、利息は年利2%で返済時に支払うものとする。(決算期:×1年4/1~×2年3/1)
(解答:現金を借り入れた時)
現金36,000/借入金36,000
現金を借り入れたので、左側(借方)に「現金(資産)の増加」を、右側(貸方)に「借入金(負債)の増加」を表現します。利息は後払いのため、上2問の繰延べパターンと異なりここでは損益に関する仕訳は出てきません。
(解答:決算整理)
支払利息420/未払利息420
借入金の利息(36,000円×2%=720円)は返済時(×2年8月31日)に支払うため、まだ利息は費用として計上されていません。しかし、当期9月から現金を借り入れているため、当期にも利息が発生するべきです。
つまり、7か月分(×1年9月1日~×2年3月31日分)の利息は当期の損益に入れてあげる必要があるのです。
そのため、7ヶ月分(利息720円×7ヶ月/12ヶ月)である420円を当期の損益に計上するため、支払利息(費用)を左側(借方)に計上します。この相手勘定が「未払利息」(未払費用)です。

(解答:再振替仕訳)
未払利息420/支払利息420
(補足:借入金返済、利息支払い時)
借入返済:借入金36,000/現金36,000
利息支払:支払利息720/現金720
上記「決算整理」は、これまで同様決算が終わったら全部消す必要があります。前期に計上した未払利息(負債)はこの再振替仕訳で消えますね。
ここで、再振替仕訳と補足仕訳の利息支払を見てみましょう。
再振替仕訳:支払利息420が右側(貸方)
利息支払 :支払利息720が左側(借方)
再振替仕訳と利息支払の仕訳は左右逆なので、×2年度の仕訳を合計すると720円-420円=300円が左側(借方)に残ることとなります。


2.2 収益の未収
×1年12月1日、現金10,000円を貸し付けた。借入期間は1年、利息は年利3%で返済時に受け取るものとする。(決算期:×1年4/1~×2年3/1)
(解答:現金を貸し付けた時)
貸付金10,000/現金10,000
現金を貸し付けたので、右側(貸方)に「現金(資産)の減少」を、左側(借方)に「貸付金(資産)の増加」を表現します。利息は後で受け取るため、損益に関する仕訳は出てきません。
(解答:決算整理)
未収利息100/受取利息100
貸付金の利息(10,000円×3%=300円)は返済時(×2年11月30日)に受け取るため、まだ利息は収益として計上されていません。しかし、当期12月から現金を貸し付けているため、当期にも利息収益が発生するべきです。
つまり、4か月分(×1年12月1日~×2年3月31日分)の利息収益は当期の損益に入れてあげる必要があるのです。
そのため、4ヶ月分(利息300円×4ヶ月/12ヶ月)である100円を当期の損益に計上するため、受取利息(収益)を右側(貸方)に計上します。この相手勘定が「未収利息」(未収収益)です。

(解答:再振替仕訳)
受取利息100/未収利息100
(補足:返済貸付金受取、利息受取時)
返済時:現金10,000/貸付金10,000
利息受取:現金300/受取利息300
上記「決算整理」は、これまで同様決算が終わったら全部消す必要があります。前期に計上した未払利息(負債)はこの再振替仕訳で消えますね。
再振替仕訳と補足仕訳の利息受取は以下の通りとなり、×2年度の仕訳を合算すると300円-100円=200円が右側(貸方)に残ることとなります。
再振替仕訳:受取利息100が左側(借方)
利息受取 :受取利息300が右側(貸方)

