

経過勘定は一見すると難しく感じますが、慣れると得点を稼ぎやすい分野です。
経過勘定を考えるコツはただ1つ、「期間損益」を考えることです。では、これから見ていきましょう。
Contents
1. なぜ経過勘定が必要なの?
1.1 経過勘定がない世界
ある会社(1月~12月が決算期)で、1月に火災保険を2年分契約し、120円を支払いました。この時の保険料(費用)は以下の通りです。
1年目:費用120円
2年目:費用0円
経過勘定がない世界では、支払ったタイミングで費用を一括計上することとなります。
■1年目の仕訳
■2年目の仕訳
仕訳なし



このように、経過勘定がない世界では損益計算書が全然異なってしまいます。1年目の財務諸表だけ見ると費用が大きく出て赤字、2年目の財務諸表は黒字があり得ることになります。
保険を使用する期間は「2年間」にもかかわらず、その費用は最初に支出した「1年目のみ」に発生すると、財務諸表を見る人はこの1年間の適正な損益が分からなくなります。
そこで「適正な期間損益」を計算するために、経過勘定を使うことになります。
1.2 経過勘定がある世界
「期間損益」をきちんと計算するためにはどのような費用配分になっていることが望ましいでしょうか。
保険を使用する期間は「2年間」なので、2年間に渡って費用が配分されていることが望ましいですね。
1年目:費用60円(120円÷2年間)
2年目:費用60円
上記の通り、60円ずつ各期に配分されていれば、財務諸表を見る人にとっても分かりやすい状態になっています。
これを仕訳に起こすと、以下の通りになります。
■1年目の仕訳
(保険料を支払ったとき)
⇒保険料を支払ったときの仕訳は「経過勘定がない世界」と変わりません。現金120を支払った事実に変わりはないからです。
このとき、保険料という費用を「とりあえず」120計上します。費用は左側(借方)でしたね。
実務上は日々たくさんの仕訳が発生するので、いちいち経過勘定を考えていては大変です。そのため「とりあえず」で費用を計上しているのです。
(決算整理)
上で「とりあえず」計上した費用120円ではなく、1年目と2年目に60円ずつ費用とするべきでしたね。
「とりあえず」左側(借方)に計上した費用を消すため、右側(貸方)に保険料60円を持っていきます。これで1年目の費用は120円-60円=60円となりました。
さて、相手勘定は何にしましょう。この相手勘定こそ「経過勘定」と言われる勘定なのです。今回は前もって2年分払っているため「前払」費用という科目を左側(借方)に書きます。
2年分支払っているため、2年目に保険料を支払う必要はありません。保険料を支払わずに保険の恩恵を受けることが出来る「権利」のようなものですので、前払費用は「資産」にになります。左側(借方)に書いていることからも、「資産」であることが分かりますね。
■2年目の仕訳
(決算整理)
去年計上していた前払費用60を使って、2年目に費用を計上します。
左側(借方)
2年目に対応する保険料(費用)を左側に計上します。
右側(貸方)
去年前払費用という資産を60計上していましたので、それを取り崩すため右側に前払費用を記載します。

2. 経過勘定の種類
2.1 経過勘定4種類
経過勘定には以下の4種類があります。
•未収収益(資産)
•未払費用(負債)
•前受収益(負債)
代金を前払した時(前払費用)や、代金をまだもらっていない時(未収収益)は「資産」になります。上述した例は前払費用でしたね。
逆に代金をまだ支払っていない時(未払費用)や、代金を前もって受け取った時(未収収益)は「負債」になります。
2.2 見越し・繰延べ
簿記の参考書では、これら経過勘定のことを「見越し・繰延べ」という言葉でよく表現しています。
繰延べ:前払費用・前受収益
見越しは「未だ」受け取ったり払ったりしていない時の勘定です。未だ行われていない金額の発生を「見越して」費用や収益を計上するため、「見越し」と言います。
繰延べは「既に」受け取ったり払ったりした時の勘定です。既に行った分を将来に「繰り延べる」ため、「繰延べ」と言います。
分類分けをした方が覚えやすい方は、「見越し・繰延べ」を是非ご活用ください。逆に覚えにくいという方は、テキストで出てくる表現のため頭の片隅に入れておくくらいで十分です。(私自身はほとんど使ったことはありません、、)
一応、「くまのみみ」(クマの耳)という語呂合わせもあります。
くま⇒「く」りのべ(繰延べ)は、「ま」えばらい、「ま」えうけ(前払費用・前受収益)
の
みみ⇒「み」こし(見越し)は、「み」しゅう、「み」ばらい(未収収益・未払費用)
3. 経過勘定の解き方
3.1 経過勘定の出題パターン
経過勘定の出題は大きく2つのパターンに分かれます。上述した例の「1年目」を聞かれるか、「2年目」を聞かれるかです。
すなわち、1年目の「決算整理仕訳」か、2年目以降の「再振替仕訳」のどちらかが出題されます。
しかし結局は「当期にいくらの金額が帰属するか」を考えれば解けますね。この「当期」が、1年目だったり2年目だったりするだけです。
3.2 経過勘定の解き方
経過勘定は時間軸を意識した線を書いて解くのがポイントです。
先程の例を線で書いてみましょう。
問題再掲

このように、線で書くと「いくらが当期分」で、「いくらが翌期分」かが一目瞭然ですね。
線には「月数」を書き込むことを忘れないようにしましょう。今回の例はきりよく1年ずつでしたが、当期分が3ヶ月、翌期分が9ヶ月といった例はよく出てきます。
この場合、金額も3ヶ月分と9ヶ月分で分ける必要があるため、視覚的に分かるように月数を書き込みましょう。月割り計算のミスも大分減りますよ!
4種類の経過勘定について、設問と共に詳しい解説を次の記事でしていますので、合わせてご覧ください!