法人住民税・事業税とは ~地方法人税・地方法人特別税の違いまで~

税金
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先生
法人税等=法人税+法人事業税+法人住民税だったね。今回は、法人住民税と法人事業税を深く見ていこう!
まいる
地方法人税や地方法人特別税といった税金もあって、こんがらがってしまいます。。
先生
言葉も似てて紛らわしいね。そのあたりも1個ずつ確認していこう!

1.法人住民税・法人事業税は地方税

法人住民税・法人事業税は、両方とも法人が地方公共団体に納める地方税です。

都道府県や市区町村などの地方公共団体は公共サービス(都道府県の消防・警察・道路・港湾といった行政サービスや、公共施設等)を行っています。公共サービス費用を地域住民や会社が負担するのが住民税や事業税です。住民税・事業税は、個人・法人ともに条件を満たせば納税義務が生じるため、会社が納める際には分かりやすいように「法人」住民税、「法人」事業税と書く場合もあります。

法人所在地の都道府県や市町村に納税されるため、各地方公共団体で税額が異なる税金となります。

2.法人住民税

2.1 法人住民税の基礎

法人住民税は、「均等割」「法人税割」の2つの要素で構成されています。

<計算方法>
法人住民税=均等割+法人税割(法人税額×税率)

法人住民税は都道府県に支払う法人都道府県民税と、市町村に支払う法人市町村民税の2種類の総称です。各々に均等割と所得割があります。なお、東京23区にのみ事業所を有する法人の場合は、法人都民税として一括で納税となります。

2.2 均等割

均等割は、資本金等の金額・従業員の人数を基礎として計算されます。年間一定額の税金となり、各都道府県・市町村のホームページで納税額が公表されています。均等割は会社の規模に応じて一定の税額が公平に適用されることとなるため、赤字の会社でも納付する必要があります。

均等割による住民税は、本社所在地に加えて支店や工場がある都道府県・市町村でも納付する必要があるため、事業所が多いほど納税額も増えます

例えば東京23区特別区に主たる事業所を有する場合、最小金額70,000円(資本金等1千万円以下、従業員数50人以下)、最大金額3,800,000円(資本金等50憶円以上、従業員50人超)となります。

Column:資本金等を減少させると節税になる?
法人住民税均等割を決定する要因の1つが資本金等ですので、資本金等の減少(減資)によって納税額の節税をすることができます。しかし、減資の際は株主総会特別決議が必要となり、税務上の論点が発生する(有償減資におけるみなし配当等)場合もあるため、税理士等専門家と共に検討した方が良い項目となります。

2.3 法人税割

法人税割は1年間の法人税額を課税標準とします。そのため、法人税が算定されると同時に、法人住民税も算定することができます。

<計算方法>
法人税割部分=法人税額×法人住民税率

法人税額は「所得×税率」でしたので、法人税率を乗じた後の「法人税」に、さらに住民税率を乗じるイメージですね。

税率は制限税率の範囲内で地方公共団体が決定することができるため、各地方公共団体によって異なります。法人税に連動するので、所得が赤字で法人税額が発生しなかった場合は、法人税均等割も発生しないこととなります。

2つ以上の都道府県に支店や工場を有する場合、課税標準の総額を一定の基準で按分して計算します。

2.4 地方法人税って何?

まいる
法人住民税のところで地方法人税が出てくるのですね!
先生
地方法人税は法人住民税の所得割と計算方法がそっくりで、関連性が強い税金なんだ。ここで一緒に確認してしまおう!

地方法人税は「国税」となり、法人住民税とは別の税金となります。一旦国が地方法人税として集め、各地方公共団体に交付する地方交付税の財源となっているため、「地方」法人税と言います。

各地方公共団体の税収には地方間格差があるため、国が一括して集めて地方に再分配することを目的として設立されている税金です。

<計算方法>
地方法人税=法人税額×税率

地方法人税は2014年の税制改正で新設された税金で、税率は4.4% (2019年10月1日以後開始事業年度から10.3%)一律となります。
新設時においては、地方法人税の税率分4.4%が、上記で説明した法人住民税の「法人税割」の税率が引き下げられているため、実質的な税負担は大きくは変わっていません。

法人住民税の法人税割:法人税額×税率(税率減少)
地方法人税:法人税額×税率(新設)
⇒納めるTotal金額は大きくは変動しません。

(法人住民税には適用されない連結納税制度・欠損金繰戻還付等が、地方法人税には適用されることから、こうした制度を適用する場合は税負担が多少変動することとなります。)

これまでは法人住民税によって所在地に直接納税していた(地方税)金額の一部が、地方法人税として一旦国に納め(国税)、国が適切に地方公共団体に配分するという仕組みに変わっている形となります。

3.法人事業税

3.1 法人事業税の基礎

法人事業税額は「所得割」「付加価値割」「資本割」の3つで構成されています。

このうち、「付加価値割」と「資本割」は「外形標準課税」といい、資本金額が1億円以下の会社は納める必要がない項目となります。

<計算方法>
(資本金額1億円以下)
法人事業税=所得割

(資本金額1億円超)
法人事業税=所得割+付加価値割+資本割

3.2 所得割

所得割は、その名の通り「所得」に法人事業税率を乗じて計算されます。

<計算方法>
所得割 = 所得 × 法人事業税率

税率については、課税所得の大きさによって税率が区分されています。
例えば、東京都の法人事業税は3段階に区分されており、所得年400万円以下、年400万円超〜800万円以下、年800万円超で各々税率が分かれています。

電気供給業、ガス供給業、生命保険業、損害保険業を行う事業者は、所得ではなく収入金額に対して課税される「収入割」となっています。

所得割は法人の所得を課税標準とするため、住民税法人税割と同様に所得が赤字の場合は、所得割も発生しないこととなります。

また、法人事業税は、既に説明した法人税・法人住民税と大きく異なる側面があり、法人事業税は納付時の損金に算入できます
すなわち、税金であるにもかかわらず費用として損金算入が認められる形となっています。

3.3 外形標準課税(付加価値割+資本割)

外形標準課税の基礎

上記の通り、資本金額1億円超の法人は外形標準課税(付加価値割+資本割)を支払う必要があります。

地方公共団体からの公共サービスは、所得の多い企業だけでなく、その地方公共団体に所在する全ての企業が享受するサービスとなります。そのため、帳簿上所得(利益)を出している企業だけが法人事業税を負担するのは不公平であり、企業がその規模に応じて負担すべきという応益課税の性質を持っています。

Column:応益課税と応能課税
・応益課税:行政によるサービスの恩恵を受ける場合に、その恩恵の量に応じて課す租税
 例えば、所得に連動しない地方税均等割・固定資産税・事業税外形標準課税等があります。

・応能課税:負担する能力のある者に対してその能力に応じて課す租税
 例えば、所得に応じて税額が連動する、所得税・法人税・相続税等があります。

付加価値割

付加価値割は、原則として各法人の「単年度損益」と「収益配分額」の合計額に税率を乗じて計算します。

単年度損益:繰越欠損金控除前の法人事業税所得
収益配分額:報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料の合計

報酬給与額=報酬・給与等+企業年金等の掛金
純支払利子=支払利子-受取利子
純支払賃借料=支払賃借料-受取賃借料

なお、報酬給与額が収益配分額の70%超を占める場合には一定の軽減措置があり、雇用・給与水準が高い企業の税負担が抑えられる制度となっています。

資本割

資本割は、原則として資本金等(資本金+資本準備金)の金額に税率を乗じて算定します。

なお、法人税法上の資本金等に一定の欠損補填を加減した金額が、資本金と資本準備金の合計額を上回る場合には、その金額が課税標準となります。

3.4 地方法人特別税って何?

まいる
今度は法人事業税のところで地方法人特別税が出てくるのですね!
先生
地方法人特別税は法人事業税と計算方法がほぼ同じで、同じ申告書上で申告納付を行うんだ。そのため法人事業税と合わせて見ると良いよ!

上述した「地方法人税」と似た言葉の税金として、「地方法人特別税」があります。これは2008年から施行されている税金で、2019年10月1日以後開始事業年度から廃止されることが決定している税金となります。

こちらも地方法人税と同様の趣旨で創設された税金ですので、「地方」とついていますが「国税」である全く別の税金です。

<計算方法>
地方法人特別税= 所得 ×地方法人特別税率
(収入割の場合は収入×税率)

地方法人特別税の税率については、新設時に法人事業税(所得割額又は収入割額)の税率を引き下げることで、合計の税負担が大きく変動しないように設計されていました。この点は地方法人税と同様ですね。
なお、地方法人特別税は2019年10月1日以後開始事業年度から廃止となりますが、その分法人事業税率は上昇します。

Column:地方法人税と地方法人特別税の相違点
地方法人税(国税)=法人税額×税率
法人地方税の法人税割(法人税額×税率)と結びつきが深い。

地方法人特別税(国税)=所得×税率
法人事業税の所得割(所得×税率)と結びつきが深く、法人事業税と同じ申告書・納付書内で申告納付を行う。

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