これまでは支配獲得日における連結会計について見てきましたが、合併や買収では支配獲得してから1年、2年…と企業活動は続いていきます。
今回は企業買収(支配獲得)後1年間の企業活動を記載するための連結会計を見ていきましょう!
1.開始仕訳
連結財務諸表は当期における各社の財務諸表を合算して作成します。そのため、前期までに行った「連結仕訳」は反映されていません。そこで、前期までに行った連結仕訳を全て反映させるために「開始仕訳」をする必要があります。開始仕訳は毎期脈々と引き継がれていくもので、100年続いている会社であれば100年分の連結仕訳がぐっとまとまった開始仕訳が計上されます。
<開始仕訳のイメージ>
1年目:個別財務諸表(親会社)+個別財務諸表(子会社)+連結仕訳(1年目)
2年目:個別財務諸表(親会社)+個別財務諸表(子会社)+開始仕訳(1年目の連結仕訳)+連結仕訳(2年目)
3年目:個別財務諸表(親会社)+個別財務諸表(子会社)+開始仕訳(1年目と2年目の連結仕訳合計)+連結仕訳(3年目)
4年目:個別財務諸表(親会社)+個別財務諸表(子会社)+開始仕訳(1年目~3年目の連結仕訳合計)+連結仕訳(4年目)
上記の通り、開始仕訳にて前期までの連結仕訳を全て投入し終えた後、当年度の連結仕訳を記載していきます。
当年度の連結仕訳において簿記2級で重要になってくるのが「子会社の当期純損益振替」「子会社の配当金修正」「のれん償却」の3つになります。
2.子会社の当期純損益振替
連結財務諸表は単純合算をまず行うため、子会社が計上している当期利益は全て合算されてしまいます。株式を100%保有している完全子会社であれば利益も100%グループのものですが、70%しか保有していない会社の場合、利益も70%分しか取り込めません。残り30%の利益は、30%の株式を持っている株主に帰属するべきだからです。
ねこ社はキャットフード社の発行済株式の70%を持っている。キャットフード社の当期純利益は10,000円であった。当期の連結修正仕訳を記載しなさい。
(解答)




3.子会社の配当金修正
子会社が親会社に対して配当金を支払っても、連結グループで見るとただの資金移動に過ぎないです。そのため、配当金を支払った事実をなかったことにしてあげる必要があります。
ねこ社はキャットフード社の発行済株式の70%を持っている。キャットフード社は当期2,000円の配当を行った。当期の連結修正仕訳を記載しなさい。

■ねこ社(親会社)の仕訳





4.のれん償却
前回の記事では、投資と資本の相殺消去によって「のれん」が生じていました。のれんは原則として20年以内の期間で、定額法等で償却が必要になります。ノウハウ等を徐々に使っているので、のれんも固定資産と同様に、徐々に費用化(償却)をしていく必要があるとの考え方です。
ねこ社はキャットフード社の発行済株式の70%を前期末に取得した。支配獲得日にのれん3,000円が生じている。当期の連結修正仕訳を記載しなさい。なお、のれんは発生年度の翌年から10年間で均等償却をするものとする。


皆さんが今学んでいる簿記は「日本基準」の簿記です。実は簿記の基礎となる「会計基準」は各国毎に定められていて、有名な基準ではアメリカの「米国基準」、国際的にスタンダードになりつつある「IFRS」があります。
特に近年有名になっているIFRS(国際財務報告基準:International Financial Reporting Standards)は、日本でも多くの有名企業が採用している会計基準となります。
IFRSでは今回取り上げた「のれんの償却」は行いません。これは、会計基準によって考え方が異なるからです。
日本基準:のれんは競争の進展によって、価値が減価する費用性資産と捉える
IFRS:将来の収益力によって価値が変動する資産のため、収益性の低下による回収可能性で評価すべき資産と捉える
この考え方の違いから、IFRSでは回収可能性がないと判断されるときに「減損損失」によってのれんを一気に損失とする手法を取っています。同じ会計事象にも関わらず、考え方によって処理が異なるのも簿記の魅力ですね。