連結会計② 部分所有・のれん

簿記2級
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今回は連結会計の中で、「部分所有」「のれん」について見ていきます。

まいる
のれんはニュースでも良く聞く単語だけど、どんな勘定科目なのかな?

1.部分所有の会計処理

前回は株式を100%取得し、完全子会社になった場合の仕訳を見ていきました。ただ、実務では「80%所有」「51%所有」というように、株式を持つ比率が100%とは限りません。部分所有のケースではどのような仕訳になるのかを見ていきましょう!

ねこ株式会社が、キャットフード株式会社の発行済株式70%を2,100円で購入しました。この時の各社の財務諸表は以下の通りです。

前回見た完全所有の場合と、財務諸表自体はほぼ変わりません。

連結会計① 連結財務諸表作成の基礎

今回は70%分しか持分がないため、投資(株式)と資本(資本金・利益剰余金等)の相殺消去が70%分しかできませんね。まずは株式2,100を全て消すため、右側に株式を持ってきます。左側に持ってきて消す資本金・利益剰余金は、各々70%分だけ消しましょう。
資本金2,000×70%=1,400
利益剰余金1,000×70%=700

この金額を基に仕訳を書くと、このようになります。

左側(借方)
金額
右側(貸方)
金額
資本金
1,400
株式
2,100
利益剰余金
700
まいる
ねこ社(親会社)の株式2,100は全部消えたのですが、キャットフード社(子会社)の資本金2,000、利益剰余金1,000は70%分しか消えないのですね。残りの30%分はどうするのですか?
先生
残りの30%分は「非支配株主持分」という勘定科目に振り替えるんだ。
まいる
非支配株主持分?
先生
ねこ社はキャットフード社の70%を持っていて、議決権の過半数は所有しているから、非常に高い影響力を持っているね。だからキャットフード社はねこ社の子会社になるし、ねこ社グループ全体の連結財務諸表を作っているんだ。でも、残りの30%はねこ社グループ以外の第三者が持っているので、全部の株式は持っていないよって財務諸表を見た人に説明する必要がある。これを「非支配株主持分」という科目を使って表現するんだ!
まいる
財務諸表を見た人は、「非支配株主持分」という科目を見て、連結グループの持分のうち第三者がどれだけ持っているかを確認することができるのですね!
非支配株主持分に振り替える金額は、キャットフード社持分の30%(100%-ねこ社持分70%)となります。
資本金2,000×30%=600
利益剰余金1,000×30%=300

左側(借方)
金額
右側(貸方)
金額
資本金
600
非支配株主持分
900
利益剰余金
300
先生
単純合算から連結仕訳を纏めたよ。

まいる
連結仕訳を加味すると、連結財務諸表はこうなりますね!

2.「のれん」の登場

まいる
よくニュースで「合併によってのれん○○億円を計上」「のれんの減損損失○○億円」と聞くけど、のれんって何だろう?
先生
今回は財務諸表に出てくる不思議な科目「のれん」について見ていこう!
ねこ株式会社が、キャットフード株式会社の発行済株式70%を3,200円で購入しました。この時の各社の財務諸表は以下の通りです。

ねこ社は前回の問題より高い金額(前回2,100円→今回3,200円)でキャットフード社を購入しています。この時、前回の設問通り仕訳を書いていくと不整合が生じることになります。なお、仕訳は前回の「非支配株主持分」の仕訳も含めて、全部一緒に書いてしまいましょう!

資本金:キャットフード社の資本金2,000円を全てを消す
利益剰余金:キャットフード社の利益剰余金1,000円を全てを消す
株式:ねこ社が保有しているキャットフード社株式3,200円を全て消す
非支配株主持分:キャットフード社の(資本金2,000+利益剰余金1,000)×30%=900円を計上する

左側の合計はキャットフード社の資本合計3,000、右側の合計は株式と非支配株主持分の合計で4,100となります。そのため1,100円分足りない仕訳になっています。

先生
この1,100円という金額、見覚えがないかな?
まいる
前回の問題より高い金額で買ってきた分です!前回は2,100円で株式を買ってきたのですが、今回は3,200円で買ってきているので、その差1,100円が足りない金額です。

キャットフード社の価値は単純に純資産(資産-負債)の金額で表現すると3,000円なので、70%分の購入では2,100円が購入価値としてあるべきです。一方、会社が会社を購入する時、そこには様々な期待が入ります。
・将来的に伸びる企業
・自社にない資産を持っている
・経営者や従業員の能力が高い
・ブランド力がある
・合併によって新しい分野に挑戦できる
・合併することで相乗効果が期待できる

この様々な期待を加味して会社は他の会社を購入します。キャットフード社の通常の収益力より、今後成長することで高い収益力が見込めると判断してねこ社はキャットフード社を購入しています。この超過収益力こそ「のれん」という無形固定資産となるのです。簿記の世界ではのれんのことを「投資消去差額」と言います。投資と資本の相殺消去によって生じた差を埋めるための勘定科目なので、投資消去差額です。この時の仕訳を纏めると以下の通りとなり、差額の「のれん」は資産なので左側に計上されていますね。

左側(借方)
金額
右側(貸方)
金額
資本金
2,000
株式
3,200
利益剰余金
1,000
非支配株主持分
900
のれん
1,100
Column:超過収益力を見込んで買うなんてあり得るの?
実務の世界では本当にたくさんの会社がのれんを計上して企業を買収します。
株を持っている側からすると、これから伸びそうな会社であれば株価が上がっていくことが見込まれるため、通常の値段(純資産分の価格)で売ってしまうとお得になりません。そこで売る側は通常の値段より高い値段で売ろうとします。
一方買う側は買う側の思惑があり、多少高くても今後伸びるのであれば自社グループに入れたいと考えます。そのため多少高い値段で売買が成立し、「のれん」が計上されることになります。
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