今回は連結会計の中で、「部分所有」「のれん」について見ていきます。

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1.部分所有の会計処理
前回は株式を100%取得し、完全子会社になった場合の仕訳を見ていきました。ただ、実務では「80%所有」「51%所有」というように、株式を持つ比率が100%とは限りません。部分所有のケースではどのような仕訳になるのかを見ていきましょう!

前回見た完全所有の場合と、財務諸表自体はほぼ変わりません。
資本金2,000×70%=1,400
利益剰余金1,000×70%=700
この金額を基に仕訳を書くと、このようになります。





資本金2,000×30%=600
利益剰余金1,000×30%=300




2.「のれん」の登場



ねこ社は前回の問題より高い金額(前回2,100円→今回3,200円)でキャットフード社を購入しています。この時、前回の設問通り仕訳を書いていくと不整合が生じることになります。なお、仕訳は前回の「非支配株主持分」の仕訳も含めて、全部一緒に書いてしまいましょう!
資本金:キャットフード社の資本金2,000円を全てを消す
利益剰余金:キャットフード社の利益剰余金1,000円を全てを消す
株式:ねこ社が保有しているキャットフード社株式3,200円を全て消す
非支配株主持分:キャットフード社の(資本金2,000+利益剰余金1,000)×30%=900円を計上する

左側の合計はキャットフード社の資本合計3,000、右側の合計は株式と非支配株主持分の合計で4,100となります。そのため1,100円分足りない仕訳になっています。


キャットフード社の価値は単純に純資産(資産-負債)の金額で表現すると3,000円なので、70%分の購入では2,100円が購入価値としてあるべきです。一方、会社が会社を購入する時、そこには様々な期待が入ります。
・将来的に伸びる企業
・自社にない資産を持っている
・経営者や従業員の能力が高い
・ブランド力がある
・合併によって新しい分野に挑戦できる
・合併することで相乗効果が期待できる
この様々な期待を加味して会社は他の会社を購入します。キャットフード社の通常の収益力より、今後成長することで高い収益力が見込めると判断してねこ社はキャットフード社を購入しています。この超過収益力こそ「のれん」という無形固定資産となるのです。簿記の世界ではのれんのことを「投資消去差額」と言います。投資と資本の相殺消去によって生じた差を埋めるための勘定科目なので、投資消去差額です。この時の仕訳を纏めると以下の通りとなり、差額の「のれん」は資産なので左側に計上されていますね。
実務の世界では本当にたくさんの会社がのれんを計上して企業を買収します。
株を持っている側からすると、これから伸びそうな会社であれば株価が上がっていくことが見込まれるため、通常の値段(純資産分の価格)で売ってしまうとお得になりません。そこで売る側は通常の値段より高い値段で売ろうとします。
一方買う側は買う側の思惑があり、多少高くても今後伸びるのであれば自社グループに入れたいと考えます。そのため多少高い値段で売買が成立し、「のれん」が計上されることになります。