Q&A:貸倒引当金

経理実務
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まいる
貸倒引当金の中で、償却債権取立益に関する一問一答だよ!

1.Question

償却債権取立益は、前期貸倒処理した債権が回収できた場合に使います。前提として貸倒処理が「実際に貸し倒れることが確定した」際になされるものであるのに、翌期に回収できる(償却債権取立益を計上する)というのはあり得るのでしょうか?
回収できたのだとしたら、前期には本当は貸倒は確定しておらず、貸倒処理するのが早かった(本来は当期に貸倒処理するべきだった=前期の決算の誤り)ではないのでしょうか。

なお、償却債権取立益については、以下の記事で解説しています。

貸倒引当金とは②(簿記3級の具体的な仕訳)

2018年5月20日

2.Answer

上記Questionの通り、確定した「貸倒損失」が当期に回収できることは本当に稀で、実務でも滅多に出てくる案件ではありません。

「償却債権取立益」が発生する要因として、次の2点が考えられます。
(1)前期末時点では絶対貸し倒れる状況だったが、その後状況が一変して貸し倒れることがなくなった。
(2)前期末時点で貸し倒れるという見積りが甘かった。

(1)状況が一変して貸し倒れることがなくなった場合
財務諸表(B/SやP/L)を作った時点では、売掛金を計上していた相手先(A社)は資金不足で手形の不渡りも連続し、絶対に貸し倒れる状況でした。しかし、財務諸表(B/SやP/L)を作った時点よりも後になって、なんと救世主が現れました。A社より大きい上場企業がA社を買収することになったのです。A社としても会社が存続し従業員が守られることから買収には大賛成。すぐに買収は実行に移されました。資金的に余力がある上場企業からの支援を受けたことで、支払うべきお金を支払うことができるようになり、売掛金を回収することができるようになりました。

この企業買収を財務諸表(B/SやP/L)を作った時点で予想するのは非常に困難ですよね。その後状況が一変しただけで、財務諸表を作った時点では最も良い判断をしていました。このような状況を会計の世界では「過去の財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき最善の見積りを行った場合」(会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準55項)と表現します。
(貸倒損失は確定した損失ですが、債務者の資産状況や支払能力等から総合的に見て債権が回収不能と判断された場合、貸倒損失を計上することが可能なため、財務諸表を作った時点での最善の検討結果という点では変わりません。)
「当期に発生した予想外の状況」により発生した債権の回収なので、償却債権取立益について原則として当期に営業外収益として計上します。

(2)前期末時点で貸し倒れるという見積りが甘かった場合
前期末時点で上記の買収等が公表されていて、A社は将来安泰であることが分かっていたにもかかわらず貸倒損失を計上していた場合、それは過年度の間違いですね。過去の見積り誤りに起因して発生している償却債権取立益なので、過去の誤謬として修正する必要があります。つまり、過去の財務諸表を修正して、過去の貸倒損失自体をなかったことにします。すると当期の償却債権取立益は、ただの「売掛金の回収」に変わります。こうして前期に間違っていた状況を修正することもあり得るのです。

Column:実務では?
一旦開示した財務諸表を「実は間違ってました」と言って修正するのは大変です。そのため金額的に本当に大きく、絶対に修正した方がいい貸倒損失でない限り、修正する事態まで陥ることはありませんし、本当に大きな貸倒損失だったら企業も威信をかけて調査しているので、「見積りが甘かった」ような事態になることは少ないです。ただ、どうしても影響が大きい場合は、「修正再表示」を行うことも考えられます。(実務上は有価証券報告書の訂正報告等を出す形となることが多いので、修正再表示とはまた異なる論点になりますが。)

簿記のテキストを見ると「償却債権取立益」という勘定が載っていますが、上記の理由から日商簿記2,3級では出題可能性は低い論点となります。
一方、2014年に改正されている論点でもありますので、簿記1級や公認会計士・税理士を目指す方は是非押さえておくと良いと思います!

まいる
「償却債権取立益」も状況によって処理が変わるんだね。過年度に遡って修正する場合もあれば、当期の収益として計上する場合もあるとは思わなかったな。
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