貸倒引当金とは②(簿記3級の具体的な仕訳)

簿記3級
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まいる
貸倒引当金を計上する理由は分かったよ!
でも差額補充法とか、実際の仕訳のイメージがつかなくて。。
前回は貸倒引当金を計上する理由と簡単な仕訳について解説をしました。
今回は実際に日商簿記3級・経理実務での解き方について解説していきます。

1.貸倒引当金の計上

決算整理仕訳において、売掛金1,000円および貸付金3,000円に対して3%の貸倒引当金を差額補充法により設定する。なお、貸倒引当金の残高が30円ある。
<解答>

左側(借方)
金額
右側(貸方)
金額
貸倒引当金繰入額
90
貸倒引当金
90

<解説>
当期末に必要な貸倒引当金は、(売掛金1,000円+貸付金3,000円)×3%=120円ですね。
前期からの残高が30円なので、120円-30円=90円の貸倒引当金を追加で計上します。

column:貸倒引当金の残高があるってどういうこと?
前期時点で100円貸し倒れるだろうと考えて100円の貸倒引当金を計上していたものの、実際には70円しか貸し倒れなかったとします。
この場合、30円が余ってしまいますよね。

つまり、前期末時点での見積りと実績の差から、貸倒引当金が余ってしまうのです。企業はこの差を毎年考えながら、見積りの精度を考えていくことになります。

2.貸倒損失の計上

当期に得意先A社が倒産し、前期に計上した売掛金1,000円が貸倒れとなった。なお、貸倒引当金の残高は600円である。

<解答>

左側(借方)
金額
右側(貸方)
金額
貸倒引当金
600
売掛金
1,000
貸倒損失
400

<解説>
今回は、前期末に計上した貸倒引当金が少なかった状況ですね。
実際に貸し倒れた金額:1,000円
前期末に貸し倒れると見積もった金額:600円
前期末に計上した「貸倒引当金」を全額消して、足りない分は「貸倒損失」(当期の費用)にします。


■仕訳の右側

今回は「実際に貸し倒れることが確定した」ので、売掛金はもう絶対に回収できない状態となりました。
そのため売掛金(資産)を消してしまいましょう。資産を消すために、売掛金は右側にきます。

■仕訳の左側

前期に貸倒引当金(資産のマイナスの性質)を600円右側に計上しています。そのため600円残高があるのですね。
前期の仕訳は、貸倒引当金繰入額 600 / 貸倒引当金 600です。

「実際に貸し倒れることが確定した」ため、前期右側に計上した「貸倒引当金」が使用されて消えます。右側に計上した「貸倒引当金」を消すため、左側に「貸倒引当金」がきます。

差額の400円は、「思っていたより余分に貸し倒れてしまった分」です。現金で返ってこないものは仕方ないので、当期の損になります。そのため「貸倒損失」(費用)を左側に計上します。
なお、実際に貸し倒れているので「貸倒損失」という科目を使います。「貸倒引当金繰入額」も同じ費用でしたが、貸倒引当金繰入額は見積りの費用(貸し倒れる可能性が高い金額を見積もって計上)でしたね。

3.前期に貸し倒れた売掛金の回収ができた時

前期に貸倒処理したA社に対する売掛金2,000円を、当期に現金で回収した。

<解答>

左側(借方)
金額
右側(貸方)
金額
現金
2,000
償却債権取立益
2,000

<解説>
最後に、償却債権取立益についてです。前期に貸し倒れた売掛金の回収が幸運にもできた時は、「償却債権取立益(収益)」という勘定科目を使います。
収益なので、右側に償却債権取立益を計上し、現金(資産)を貰ったため、左側に現金を計上します。

column:償却債権って何?
会計の世界では「減価償却」、皆さんの身の回りでは「敷金の償却」等で「償却」という言葉が出てきますね。
償却とは、会計において「価値をなくしてしまう=帳簿価額を減らしていく」ことです。
つまり「償却債権」とは、価値がなくなった債権を言います。(債権とは売掛金・受取手形・貸付金等のことです。)
前期に貸し倒れた場合、貸倒損失100/売掛金100 の仕訳をきりますが、この仕訳において右側の「売掛金」(資産)は減少していますね。価値がなくなった債権なので、売掛金は「償却債権」なのです。
「償却債権」として諦めていた売掛金が、思いがけず現金で返ってきたから、「償却債権取立益」となります。

貸倒引当金とは①:貸倒引当金が必要な理由・仕訳方法

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