
貸倒引当金、簿記では本当によく耳にしますよね。
日商簿記3級から出てくる決算整理仕訳です。今回は貸倒引当金を計上する理由と、仕訳の仕方です。
Contents
1.貸倒引当金とは
1.売掛金の計上
まいる株式会社が得意先のA会社に商品を売りました。代金は2か月後に払う約束です。
このように、会社はものを売ることで売上をたてます。ここで、左側の売掛金に着目してみましょう。
まいる株式会社はA社の他にB社・C社・・・と様々な会社と取引をしています。つまり、売掛金を色々な会社相手に持っています。
売掛金(A社)100円
売掛金(B社)500円
売掛金(C社)80円
・・・
A社は資金繰りが厳しく、間もなく倒産しそうという情報を手に入れました。
そうなるとA社への売掛金100円は回収ができなくなってしまいます。
売掛金(A社)100円:倒産してしまい、返ってこない。。
売掛金(B社)500円:2か月後に現金で入ってくる!
売掛金(C社)80円:2か月後に現金で入ってくる!
A社には売上を計上したものの、売上分の現金が返ってこない事態となってしまいました。
まいる株式会社は100円損してしまいますね。
2.貸倒引当金の計上
せっかく売上をあげたのに損をしてしまうことが分かったので、その分の損を取り込みましょう。
⇒左側の「貸倒引当金繰入額」は「損」のことです。「損」は収益か費用かで分けると費用ですよね。そのため「左側」に計上します。
⇒右側の「貸倒引当金」は「売掛金のマイナス」のことです。
「資産」が「減少」してしまうので、右側に計上します。
これが貸倒引当金の根本的な考え方です。
①まだ正式に「返ってこない」と分かったわけではないから
実際に倒産したわけではなく、あくまで「倒産するかもしれない」ですよね。売掛金も「もしかしたら返ってくるかもしれない」のです。もし2か月後に100円が振り込まれても、売掛金を消していたら「この100円ってなんだっけ?」となってしまいますよね。そのため「貸倒引当金」を使って消すのです。
②個別の相手先に紐づくものではないから
今回の例ではA社が倒産してしまうという前提でしたが、実務ではどこが倒産するか読めないですね。(A社の立場に立つと、自社が倒産しそうという情報は最後まで隠したいですよね。噂が流れ始めたらもう瀬戸際です。)
そのため前年度に実際に貸し倒れた金額から、当年度に貸し倒れそうな金額を推定して計上します。A社、B社、C社、、に対する売掛金に個別に紐づくものではないので、「貸倒引当金」という勘定を使って消します。
③財務諸表を見る人はどれだけ貸し倒れているのかを確認をしたいから
まいる株式会社の財務諸表を見る人は、会社がどのくらい貸倒リスクを負っているかを確認したいのです。売掛金で消してしまうと、どのくらい貸倒となってしまったか(現金が返ってこなかったか)が分からなくなってしまいます。
2.設例

<回答>
⇒実際には貸倒がどの程度発生するかは分からない(コラム②)ので、過去実際に発生した貸倒を考慮すると、だいたい3%程度が貸し倒れるだろうと推定をします。その上で、当期末の売掛金に対して貸倒引当金を計上するのですね。
損失に対応する「売上」が当期に計上されているからです。当期の売上1,000に対して、次の年に貸倒が30発生しました。すると当期における本来のもうけは970ですね。
もし貸倒引当金が計上されないと、当期に1,000のもうけ、次の年に30の損失とちぐはぐなことになってしまいます。そのため、期末日時点で次の年の損失を見積もって、当期の損失にします。(これを、期間損益の対応と言います。)

そもそもなんで貸倒引当金って必要なの?